2011年3月29日火曜日

それでも原発は廃止できない

チェルノブイリ以来の重大原子力事故となってしまった東北電力福島第一発電所。きょう,とうとう枝野官房長官が燃料棒が溶解していることを認めた。水素爆発があった段階で圧力容器内に注水できなければ炉心溶解に至ってしまうことは関係者なら分かっていたはずだ。さすがに海外政府やメディアは正常に反応し,関係者の退避を早めに勧告,実施していた。日本の政府,電力会社,行政機関は信用できないという印象を強く与えただけだ。このことは今後国際活動において大きく後を引く事だろう。環境エネルギー分野でリーダーを務めることは出来ないだろう。既に京都議定書に基づく温室効果ガス排出削減では,取り残され化石化している状態に今回の原発事故の追い打ちは環境エネルギー分野の敗北を決定づけたと言っていいだろう。技術的には進んでいるのに政治と行政が失敗してしまったのだ。
オバマ大統領が発表した「スマートグリッド」にしても技術関係者から見れば,「日本の電力系統はスマートグリッドに近いものを構築しており分散電源や家庭の取り込みも運用実証が進められコストの目処がつけば実用できるところまで来ていたのに,このままではアメリカが提唱して日本は追随している印象を与えてしまう」と感じたことだろう。案外,日本の電力運用技術が進んでいることに危惧したアメリカの関係者が先手を打ったのかもしれない。スマートグリッドに関する技術基準や特許のバリアを張って日本方式が世界標準にならないように手を打ったのかと思う。今まで,散々やられてきたことである。
さて,今後世界の原発の行方だが,まず核保有国は絶対原子炉を廃止しない。非核保有国では古い原子炉の廃止や,新設の計画停止がある程度進むだろう。ただ非民主国家は原子炉の運用・計画を変更しないだろう。原子炉計画を変更する場合,その穴埋めを何に頼るかということになるが,前に書いたとおり太陽電池,風力発電は安定供給が出来ない。水力は建設に時間がかかるが,水利権や河川生態環境の行政措置が変更出来れば拡充がある程度期待できる。石油,天然ガスを増やすのも外国から購入するのに直ぐ量を調達できるわけではなく,今後,残存量が目減りしていく中で価格も上昇するだろう。残りは石炭がある。いずれ石炭発電を増やさねばならくなるだろう。いずれにしろ,原子炉をゼロにする見込みは今の日本としては全く目処立たないのだ。
日本政府と電力会社としては

●既存の原子力発電所の安全・防災体制を見直し,万全を期す。

●原子力発電の依存割合を下げる。

●二酸化炭素が地球を温暖化するということを見直し,石炭などの発電も取り入れ,エネルギー源のリスク分散をする。

●水力発電を増やせるよう水利権・河川環境維持の変更をする。
ということが政策・施策として重要になると思うのだが。

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